公開: 2020年5月9日
更新: 2020年5月9日
私たち人間は、思いをめぐらせるとき、頭で考えていることや、考えたことを、言葉にして紙や粘土板の上に書きます。この「書く」という行いをするためには、頭の中で考えたことを、言葉に直して、それを文字を使って書かなければなりません。この時、考えていることや考えたことを「言葉で表す」こと、そしてその言葉で言い表されたことを、「文字にして表す」ことを通して、頭の中で考えているのとは違う条件で、思いをめぐらせます。
頭の中で考えるときには、「このことは正しい」と信じて、考えを進めれば良いのですが、その考えを「言葉で表そう」とすると、「なぜそれは正しいと言えるのか」についても、説明しなければなりません。それは、自分が考えたことや考えていることを、自分とは切り離して、その「言葉で言い表されたこと」自体て、他の人々達にも分かるようにしなければならないからです。そのためには、他の人々も分かっている共通の言葉を選び、個々の言葉を言葉を組合わせる文法を使って、分かり易く説明しなければならないからです。
特に、言葉を使って「言い表されたこと」を、文字を使って「書き表すこと」によって、その書かれた文を、話をした人から切り離して、どこかへ運び、全くその人とは関係のない人々にも、その文を見せて、分かってもらうことができるようになります。これができるようにするためには、話をした人の周(まわ)りでは、「当たり前のこと」としてお互いに分かり合えることでも、遠くに住む人々や、異なる時代に生きている人々にとっては、「当たり前とは思えないこと」かも知れません。ですから、書かれた文は、そのような話が行われた場所や時間が違っていても、多くの人々が理解できるように、言葉で言い表されていなければなりません。
このような理由で、ものごとについて思いをめぐらせるとき、頭で考えたことや考えていることを、「言葉で言い表し」、それを「文字にして書く」ことが大切です。こうすることで、言い表された文が、理解し易いものになります。